高校生がつづる 森・川・海 聞き書きの本棚

故郷の未来を照らすために

みなさんは「七島イ」と聞いて、いったい何を想像されるでしょうか。

七島イとは、現在は大分県の国東半島でのみ生産されているイグサに似た植物で、畳の原料となるものです。七島イには約350年もの歴史があり、その丈夫さから柔道用の畳として使われるなど、全国で親しまれていました。しかし、手作業の工程が多く、生産が過酷であることなどから、平成初期に国東半島が全国唯一の生産地となると、2009年には生産農家が5軒にまで減少、産地消滅の危機に陥ります。そうした状況をうけ、翌2010年に生産者や畳屋、行政、JAなど地元の人々が「くにさき七島藺振興会」を発足させ、新規就農希望者に対する研修や七島イ工芸士の作品販売などを始めました。その結果、現在は少しずつ農家数も増え、アクセサリーなどの新たな工芸品が東京でも販売されたりと、その魅力は着実に広がっています。

その「くにさき七島藺振興会」の発起人の一人である七島イ農家の松原正さんを、愛媛県の高校に通う井上京香さんが取材しました。

井上さんは多忙な学校生活のなか、一つ一つのことが中途半端になってしまう自分を変えたい、自分自身の視野を広げたいとの思いから聞き書き甲子園に参加しました。そんな井上さんに、「七島イってこんなにもいろいろな使い道があっていろんなものに姿を変えるんだよ。素敵でしょ」と名人は語ります。名人の七島イに対する愛情、そして故郷の国東市に七島イ栽培で貢献したいという情熱にふれた井上さんは、自分自身をかえりみるだけでなく、故郷のために、周りの人たちのために何かに取り組むことの大切さを知ることができたといいます。

井上さんはできあがった作品に「あなたの暮らしに七島イを」とタイトルをつけました。作品を読めば、きっとあなたも、七島イに触れてみたくなるはずです。

 

あなたの暮らしに七島イを

名人
松原正(大分県国東市)
聞き手
井上京香(愛媛大学附属高等学校2年)

やりがい

単純に七島イを育てることが面白い。過酷な作業が多くて体力はきついけど、七島イを自分で一から育てて収穫まで出来たらうれしいし達成感がある。それにそれを使って畳表に加工する。そうしたら1つのもので2回喜びが感じられる。他の農産物とかではあまり味わえないんじゃないかな。

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