高校生がつづる 森・川・海 聞き書きの本棚

仕事観から伝わる、飛島への想い

森・川・海の「名人」を全国の高校生が一対一で取材する「聞き書き甲子園」。2002年にスタートして以来、農林水産省の関連団体より選定・表彰される名人に聞き書きを行ってきました。2019年(第18回聞き書き甲子園)からは、高校生の取材受入や名人の推薦に協力する市町村(地域)と連携し、各地域が推薦する複数の名人を聞き書きする形で実施しています。
以降の「聞き書きの本棚」では、高校生が取材に訪れた地域の特色等を交えながら、代表的な作品をご紹介したいと思います。

山形県の唯一の離島、飛島。酒田港の北西39キロの日本海上に位置します。周囲約10キロの小さな島に希少な動植物が多数生息し、海の恵みも豊かな当地には、バードウォッチングや海水浴、釣りを楽しむ方が多く訪れるそうです。一方で、数々の伝説や離島特有の生活様式なども残されています。
そんな小さな異世界に足を踏み入れたのは、東京の女子校に通う宮島さん。飛島生まれの漁師である池田さんを取材しました。池田さんは、先祖代々漁業に携わる家系に生まれ、物心ついた時から船に乗っていたそうです。たたきあげてきた漁師としての経験により、豊富な知識をもつ池田さんを、宮島さんは敬意を込めて「海のオールラウンダー」と呼んでいます。そして、名人の仕事に対する姿勢や生き方の指針になっている「努力」を支えてきたものの中に、飛島への深い愛情があることを感じ取りました。

飛島でも、高齢化による人口減少や産業の衰退が問題化してきているようですが、近年は、UターンやIターンした若者たちが合同会社を設立し、飛島を活性化しようとする動きも見られます。聞き書きを経て、宮島さんは今後について、「どんな形であれ、飛島にかかわり続けたいと強く感じる」と述べてくれました。名人が大切にしてきた自然と生きる知恵や技、そして島への想いも受けとって、宮島さんはこれからどのように飛島とかかわっていってくれるのでしょうか。

海のオールラウンダー~長い積み重ねの上にある今~

名人
池田幸一郎(山形県酒田市)
聞き手
宮島梧子(東京都女子学院高等学校2年)

オールラウンダーの仕事道具

魚によって漁法は本当にさまざまだ。網の目合い、網を仕掛ける場所、使う道具やエサも、全部変わってくるでの。そやけ、漁さ行く前に、季節や天気も考えて、今日は何がいいんだろう、って自分で判断する。 一番整備に手間がかかるのは網だね。おもりになるロープは、1mで何㎏もある。これに、とるもんに合わせて他の材料を絡めていく。この下にあのおもり付けて、こっちにこのおもり使って、あれとそれの間にこれを付けてこの網を付ける…って、自分で考えて網を作るんよ。

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