高校生がつづる 森・川・海 聞き書きの本棚

次世代につながる姿勢

霧島山系をのぞむ盆地に位置する宮崎県都城市。現在は国内屈指の畜産のまちとして有名ですが、古くから樫材の生産も盛んに行われてきました。その豊富な樫材を利用して、柄木(農具の柄)や木刀作りが盛んに行われてきました。現在、市内の木刀製作所は、わずか3軒となりましたが、その3軒が全国に流通する木刀の約9割を作っています。

今回、高校生が訪ねたのは、そのうちの一つ、新留木刀製作所の新留義昭さんです。製作所の2代目として18歳の時から仕事を習い始めた新留さんは、木刀作りを40年以上続けてきました。

木刀には、100以上も種類があり、それぞれに型が存在します。「種類によって全部反りが違ったり、大きさが違ったりする。この型こそが、私らが作ってきた生命線なんです。これをいくつ持っているかで、どれだけ木刀が作れるかが決まってくる」と言います。

そんな名人を聞き書きしたのは、沖縄県に住む高校2年生の狩俣恵さんです。狩俣さんは小学校時代に剣道を習っていたので、木刀がどのように作られるのか以前から気になっていて、取材が決まったときは嬉しかったそうです。

目の前で、木刀作りを見せて頂きながら取材を行ったという狩俣さん。彼女の聞き書き作品には、名人が使っている道具の特徴や、木刀作りの手順が丁寧にまとめられています。名人が一本一本丁寧に木刀を作る姿勢は、猪俣さんが、これから様々なことに取り組むときの心構えにも大きな影響を与えたようです。

木刀一途 ~都城で栄えた職人の技~

名人
新留義昭(宮崎県都城市)
聞き手
狩俣恵(沖縄県立中部農林高等学校2年)

カンナは世界に一つだけ

やっぱり木刀は元々硬い材料だから削りにくいんです。建築業の大工さんなんかが使う木材とは硬さが違うんです。だからそれに応じて特別なカンナを使うし、刀の削る部分に応じて20丁、30丁とあって使い分けます。私らのカンナは特殊なものでね、カンナを買って、あとは自分で手作りします。カンナは普通に市販されてるから、それを買って自分でちょっと加工して使います。だから木刀1本作るのに何種類かカンナを使って仕上げるという感じ。削る場所によってカンナを使い分けている。

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