高校生がつづる 森・川・海 聞き書きの本棚

喜んでもらえる“仕事”と“役割”

神山町は、徳島県の北東部に位置しています。全面積の8割以上を山地が占め、中央を流れる鮎喰川(あくいがわ)に流れ込む数本の谷川が、季節ごとに渓谷の美しい景色を作りだしています。日本神話に登場する穀類の神「オオゲツヒメ」を祀る上一宮大粟神社があることから、古来よりこの地で穀物栽培が行われていたことをうかがわせる歴史もあります。近年では、IT系のベンチャー企業などが相次いでサテライトオフィスを構えるようになり、移住希望者も増えているなど、地域創生の旗手としても注目されています。
この地で50年以上にもわたり、しいたけ栽培を続ける山の名人、杼谷潔さんを訪ねたのは、香川県在住の高校生、廣瀬愛唯さん。初めて名人を訪ねる日、山間部を進んでいくバスに揺られながら、期待と緊張で胸がいっぱいになっていました。
「遠かったやろ?」
名人は、廣瀬さんにやさしく声をかけてくれました。印象に残っているのは、名人の言葉よりもその表情だったと感想を述べてくれた廣瀬さん。その作品には、しいたけ栽培の実際が丁寧に聞き書きされています。そして時折、メールメッセージによく使われる「(笑)」という表現も見られます。このようなところに、懇切丁寧に答えてくださる名人の人柄や、にこやかな表情を伝えたかった廣瀬さんの思いが込められているのではないかと感じます。

名人は祭りの世話役なども務めておられ、地域振興にも尽力されています。そこに暮らす人々が協力して、楽しみながらその魅力を高めていこうとすることが、地方創生を成功させる観点からは一番大切なことではないかと思います。
愛着のある地元とそこに暮らす人々を思う名人の心。それに気がついたとき、廣瀬さんは杼谷さんの取材ができたことに感謝したと語ってくれました。

神山の宝

名人
杼谷 潔(原木しいたけ栽培)
聞き手
廣瀬 愛唯(香川県 香川誠陵高等学校1年)

本伏せ

6月ぐらいになると本格的にほだ木を組んで山の木陰に置いとく。あんまり乾き過ぎてもいかんし、湿り過ぎてもいかん。いい菌を残すために木陰に置いとく。置きかたは『よろい伏せ』と『井げた積み』。一番いいのはよろい伏せ。井げた積みはあんまり高うにしたらいかん。高かったら、上が乾燥し過ぎて下は湿り過ぎる。やけんほんまは4、5段で1mぐらいの高さがえんよな。でもうちは10段で1m50㎝ぐらいまで積んどる。楽なけん高うしよる(笑)。

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