高校生がつづる 森・川・海 聞き書きの本棚

緻密な仕事の中にある思いやり

皆さんは、「大子那須楮」をご存知ですか。茨城県大子町で生産されている和紙の原料「楮」で、美濃和紙・越前和紙に用いられる最高級の楮と言われています。

その歴史は江戸時代にまで遡り、水戸光圀により植栽が奨励されて以来、地域の特産品として知られるようになりました。「大子那須楮」は繊維が細かく緻密で、現在でも重宝されています。ユネスコ無形文化遺産に登録されている本美濃紙には、「大子那須楮」のみが使用されているそうです。

そんな「大子那須楮」の栽培から加工・販売までを手掛ける名人を取材したのは、岩手県の高校に通う遠藤愛斗さん。「知らないことを追い求めれば追い求める程、新しい発見があった」と振り返る遠藤さんの聞き書き作品には、私たちの知らない「大子那須楮」の世界が広がっています。楮の木を育て、根本から収穫した後、長さを揃えて窯で蒸し、手作業で皮を剥き、さらに表皮を取って天日干しにする。こうして1年がかりで出荷出来るようになるのです。

さらに、遠藤さんが取材した齋藤邦彦名人は、出荷前に虫食いや腐った部分等を取り除く、もうひと手間加えるそうです。「紙漉き屋さんの『塵取り』っていう楮を水に浸けてゴミやホコリを取る作業の負担が軽くなるから」。「大子那須楮」の生産を通じて日本の伝統文化を支えている名人の緻密な仕事と思いやりに、皆さんも触れてみませんか。

紙漉き屋さんを思いやり、良い楮を作るんだ

名人
齋藤邦彦(茨城県大子町)
聞き手
遠藤愛斗(岩手県立盛岡農業高等学校1年)

楮の栽培から手間を惜しまない

幹から剥がした皮に黒い皮や甘皮っている緑色の皮がついてるのを小包丁で剝いで白くするんだ。それを表皮取りっていうんだよ。(中略)

黒皮、甘皮を取って、大子町の冬の乾燥した寒風に2日くらい晒して干すんだ。そして、そのまま商品として出荷するのではなく裏側まで見て小さなゴミや虫食い、腐った部分は取り除いてから、出荷するんだ。そうすると紙漉き屋さんの「塵取り」っていう楮を水に漬けてゴミやホコリを取る作業の負担が軽くなるから。(中略)

加工が終わったら、腐ったところはないか、傷ついたりしていないか確認するの。楮の木を100㎏伐ってきて、6㎏しか製品の分は取れない。私のところで今年1年で加工した製品は全部で約1800㎏くらいだよ。

 

 

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