高校生がつづる 森・川・海 聞き書きの本棚

地域を支える海女のたくましさ

志摩市は、三重県東南部にある志摩半島の南側に位置し、市全域が国立公園に含まれています。英虞湾、的矢湾といったリアス式の海岸があるのが特徴的で、大小の島々が点在する生態系の豊かな地域です。かつては、豊富な海の幸を朝廷に献上していた歴史もあります。今回ご紹介する作品は、その志摩市で約40年にわたり海女を続けている名人への聞き書きです。
恵まれた地形と豊かな藻場を背景に、海女漁の歴史は古く、縄文時代の中頃にはすでに素潜り漁が行われていたと伝えられています。海女が捕った海産物は伊勢神宮に奉納され、海女が中心となる祭りが伝承されているなど、「海女文化」も色濃く残っています。

女性が素潜りで獲物を捕る漁は、体力や経験を要する、自然相手の厳しい仕事だといえます。しかし、地域社会が古来よりこれを女性の職業として認め、男性と同様の役割が与えられてきたということが、この仕事に対する誇りや自信を生み出しているのでしょうか。『海女に「つらい」なんて言葉は似合わない』というタイトルがつけられたこの作品には、体一つで漁を行う海女のたくましさが描写されています。

聞き手である伊藤さんは、仕事としての厳しい面がありながらも、名人の言葉から「つらい」という感情が感じられなかったことに感激し、「楽しみをつくって働きたい」と語る名人の姿勢にあこがれを抱きました。また、伊藤さんは名人から「いろんな人と出会うことが大事」という言葉をもらいました。作品からは、助け合いながら切磋琢磨する海女同士の関係や、地域の人々とのつながりから得られる経験が大切であることも感じ取れます。

長年受け継がれてきた、志摩の海とともにある海女の世界。あなたも少しのぞいてみませんか。

海女に「つらい」なんて言葉は似合わない

名人
三橋まゆみ(三重県志摩市)
聞き手
伊藤愛(三重県立桑名高等学校2年)

海女っていうのは

海女は「欲と根性」があったらだれでもなれるんです。ものをとろうとする「欲と意欲」と辛抱する「根性」と。辛抱っていうのはすごい疲れるし、苦しい仕事やから。海女はね自分に厳しいんです。

こんなにえらいと思いながらも行くっていうのは何の魅力があるんやろうね。海女の仕事っていうのはその日のうちに値段、金額っていうかたちに出るっていうのが一番のやりがいやと思う。目標を達成したらうれしいし、それが目に見えることがいい。海女っていうのは結果が出るからやれる。

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